子どもの指導者サポートは、子どもに関わられている方やこれから子どもに関わるお仕事をしたい方等にご受講いただけるプログラムです。
主に、赤ちゃん、子どもと関わる職種の方が受講されています。
具体的には、放課後等デイサービスの指導員や保育士、幼稚園教諭、小中学校教員、子育て支援施設、習い事教室の講師の方がご受講されています。
安心安全の中で、皆が自己表現をしながら
お互いを尊重し合う世界を創る
「うちの子、他の子とちょっと違うかも……」
「言葉が出るのが遅い」
「視線が合わない」
「なかなか指示を聞いてくれない」
「ちょっとしたことでかんしゃくを起こして止まらない」
「まだ小学校低学年なのに、授業についていけない」
「どうして、うちの子だけ……?」
そんなお母さんたちやご家族の不安の声をよく聞きます。
自分の子どもの発達が気になる。でも、誰に相談したらいいのかわからない。
同じ年頃の子どもをもつお母さんたちや幼稚園、保育園の先生たちに聞いてもらっても、「大丈夫」「そのうちよくなるよ」で話が終わってしまう。そして、ときには「育て方が悪いんじゃないの?」と心ない言葉で傷付いてしまうこともあります。
発達支援センターなどの公的機関に相談しても、療育は月に1回か2回。発達の検査を受けるだけで3カ月待ちということもあります。ですが、そうしているうちにも、子どもは日々、成長していきます。本当にこのままでいいのだろうか、もっと他にできることがあるのではないかと、心配で夜も眠れないお母さんたちのお話を聞くと、本当に心が痛みます。
そして、実は、困っているのは、子どもたちやお母さん、ご家族だけではないのです。
発達の気になる子どもたちを支援している先生たち、放課後等デイサービスの職員さんたちも、子どもの発達についてまともな教育や学習の機会がなく実務についていることが多いのが実情です。困っている子どもたちやお母さんたちの力になりたいのに、なかなかアドバイスもできず、歯がゆい思いをされている支援者の方が数多くいらっしゃいます。
私も、そのひとりでした。
小学校の教員をしていた年度末、校長室で突然、こう言われたのです。
「4月から特別支援学級の担任をしてくださいね」
「え? 特別支援学級? ちょっと待ってください。私、そんな免許もってません」
「大丈夫。なくてもできるから」
「……はい……!?」
うそでしょ!? と思いました。特別支援学級といえば、発達の気になる子どもたちが在籍するクラス。ましてその担任ともなれば、プロフェッショナルな知識が必要なことは言うまでもありません。そんなクラスの担任を、まっさらな知識しかない私がするの?
悪い冗談にしか思えませんでした。でも、これが現実なのです。
そして、もっと悪いことに、当時の教育の風潮として「発達障害(※注1)は改善しない」「学校に来なくなるといけないから、がんばらせてはいけない」「特別支援学級で宿題を出してはいけない」といった暗黙の了解がありました。けれど、私は小中学校の特別支援学級の教員をしながら、ずっと、そのことに疑問をもっていたのです。
発達の気になるお子さんは、本当に改善しないのか?
きっかけをくれたのは、ひとりの男の子でした。
当時、小学2年生だったNくんです。
Nくんのことは、彼が1年生のときから知っていました。勉強にも意欲的で、よく気が利いて、先生のお手伝いをよくしてくれる活発な男の子。クラスでも人気者で、あいさつをよくしてくれるハツラツとしたNくんのことは、職員室の先生たちの間でも評判になっていました。
そんな子が半年後、2年生になって、私が初めて担任した特別支援学級のクラスにいたのです。名簿を見たときは、正直、目を疑いました。
「なんでこの子が、特別支援学級にいるの!?」
後からわかったことですが、Nくんはご両親が半年前に離婚していて、Nくんを取り巻く環境が激変していたのです。ご両親の離婚前には、お母さんが作ってくれたご飯をきちんと食べていたのですが、そのときは、コンビニの朝ご飯、夜もお弁当という食生活。保護者の方も夜間に仕事をするようになって、Nくんとの関わりが激減していました。
そんな半年間の生活の中で、活発で勉強のよくできた男の子は変わっていました。やる気がなく不衛生で、いつも鼻水を垂らし、勉強もあまりできなくなりました。夜、飼い犬をリュックに入れて自転車に乗り、段ボールで寝るんだと言って、家を飛び出したこともあるそうです。
そうして、たった半年の間に、元気で明るく、勉強にも意欲的だったNくんは「学習障害の疑い」と診断されるまでになっていました。食と関わり方が変わっただけで、まるで別人になったかのようでした。
当時、Nくんのいる特別支援学級の担任になった私は、こう思いました。
まだ元に戻るんじゃないか?
それからは、必死にNくんと向き合いました。食生活を見直し、関わり方を改善して、特別支援学級でもかまわず宿題を出しました。
周りの先生たちからは反対されました。発達障害はよくならないから、学校に来なくなると困るから、厳しくしてはいけないと。でも、私はそんなはずはないと思いました。1年生のころの、ハツラツとしたNくんを知っているのです。
その後、私は意見の相違から仕事を辞めることになるのですが、4年生まで特別支援学級で過ごしたNくんは、私が小学校を去る5年生への進級のタイミングで、普通級に戻れるまでに変わっていたのです(※算数・国語は通級指導として支援級に通う形)。性格も、1年生当時のように明るく元気なNくんになっていました。
その後も、発達の気になるお子さんとご家族を支援してきて、私はますます「発達の気になる子どもたちは改善する」ということを確信するようになりました。そして、以前の私と同じように、困っている子どもたちやお母さんたち、ご家族を支援するみなさんの力になりたいと思うようになったのです。
支援者のみなさんが安心して活動できるように、2016年には「発達支援教育アドバイザー®」の資格を作り、2021年には商標登録しました。
当事者を支えている皆さんへ
このテキストは、わが子の発達について悩んでいるお母さんたちやご家族、そして何よりも、そんな当事者を支えている支援者のみなさんのために書きました。
発達について悩んでいる子どもたちやお母さんたちを笑顔にしたい、役に立ちたい、応援したい。そんなあなたが、目の前のひとの無限の可能性を信じて、できることを一緒に考えていくための指針になってくれたら嬉しいです。
たったひとり、自分のことを信じてそこにいてくれるひとがいれば、ひとは夢を叶えていける。私は、そう信じています。本書を手にしてくれたあなたが、子どもたちやお母さんたちの一番の味方、応援者になってくれることを願っています。
【※注1】
発達障害とは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。くわしくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
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